税理士さっさんのブログ

税に関する豆知識や旬の税金ネタについて専門家の観点から自由に述べます。

アパート経営で節税? 相続税編①

こんにちは。

税理士のさっさんです。

 

前々回、「アパート経営で節税? 所得税編」を書きました。

今日は「相続税編」を書きます。

相続税編」は話が長くなりそうなので、とりあえず「①」とします。

 

「アパートを建てると相続対策になりますよ!」って聞いたことありません?

ホントですかね?

先に結論書きますね。

 

「『とりあえず』相続税は安くなります。」

 

具体的な金額で検証しますね。

今回は2パターンを比較しますね。

 

パターン1

~前提条件~

① 母75歳 子50歳 相続人は子1人のみ

② 母は現金1億円を所有し他に財産や借金はない

~計  算~

① 財産を計算します。現金のみ。1億円ですね。

② 債務を計算します。ありませんね。0円です。

③ 相続税を計算する上での「控除額」を計算します。

 計算式:3,000万円+600万円✕法定相続人の数 に当てはめると

     3,000万円+600万円✕1=3,600万円になります。

④ (①-②)-③=6,400万円(課税価格っていいます。)

⑤ 相続税を計算します。

 6,400万円✕(30%-700万円)=1,220万円

            ↑税率です

 →相続税は1,220万円です。

 

パターン2

~前提条件~

① 母75歳 子50歳 相続人は子1人のみ

② 母1億円の土地(更地)を所有

③ 銀行から1億円の借入を行い、1億円のアパートを建築し賃貸開始

④ アパートは満室

⑤ 借地権割合 70%(地域ごとに国が定めています。)

⑥ 借家権割合 30%(県ごとに国が定めています。)

⑦ アパートの固定資産税評価額 7,000万円

~計  算~

① 財産を計算します。

財産は、元々所有していた土地と建築したアパートですね。

(ア)土地の計算

 土地の使い方が「更地」から「アパートの敷地」に変わりましたよね?

 そうすると、相続税法上の取扱いも「自用地」から「貸家建付地(かしやたてつけち)」に変わるんです。評価方法も変わります。

 評価の計算式:自用地の価額-自用地の価額✕借地権割合✕借家権割合✕賃貸割合

 これに当てはめると

 1億円-1億円✕70%✕30%✕100%=7,900万円

 →7,900万円が土地の評価額になります。下がりましたね。

 

(イ)建物(アパート)の計算

 建物の「相続税評価額」を算定する場合には「固定資産税評価額」っていうのを用います。

持ち家の方でしたらご存知ですよね?

毎年「課税明細書」がお住いの市町村から送られてくるでしょ?

そのなかに「評価額」っていうのが記載されています。その金額を用います。

この評価額は「評価の安全性」って言って建築費用よりも安く設定されているんです。

なので、前提条件で建築費用1億円に対して評価額7,000万円で設定しました。

計算式:アパートの固定資産税評価額✕アパートの固定資産税評価額✕借家権割合

    ✕賃貸割合

当てはめると

7,000万円-7,000万円✕30%✕100%=4,900万円

4,900万円がアパートの評価額になります。だいぶ下がりましたね。

 

(ウ)財産の合計

(ア)+(イ)=1億2,800万円

② 債務を計算します。銀行借入の1億円ですね。

③ 控除額はパターン1と同じです。3,600万円ですね。

④ ①-②=2,800万円

  2,800万円-3,600万円=△800万円

  マイナスになりましたね。

  なので相続税はかかりません。

 

よって、冒頭の結論通り、相続税は安くなります。

では、なぜ、『とりあえず』なのか?

 

「アパート経営」って損するために行う人はいませんよね?

パターン2で建てたアパートは今後収益を生んでいくでしょ?

そうすると母の財産は少しずつ蓄積されていくんです。

母が長生きすればするほどパターン1とパターン2の差額がどんどん縮まっていって、最終的には逆転する可能性もあるんです。

 

だから建てた後の対策っていうのも必要になってきますよね。

私が付き合いのある住宅メーカーさんからは、建てた後の対策シミュレーションをしてくれっていう依頼もあって、お客様から喜ばれているみたいですよ。

建てる方も安心ですしね。

 

やっぱり長くなりましたね。

まだ「小規模宅地」とか何も言及していないのに・・・

いずれ②を書きます。